11月1日、韓国最高裁が新日鉄住金に韓国人元徴用工への賠償を命じた判決を受け、韓国では他の元徴用工や遺族からの訴訟が相次ぐと予想されています。韓国で「強制徴用された」として訴訟を提起した人は約900人で、韓国政府が認定した人数は約22万人に上るといわれています。これらの人やその遺族がいつまで賠償を請求し続けることが許されるのか、「損害賠償請求権の時効」が当然問題になります。時効に関する3つの代表的な考え方と、韓国人のネットに寄せられた声をいくつか紹介します。
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時効の起算点には言及しなかった最高裁
今回の裁判で新日鉄住金は「損害賠償請求権は時効によって消滅しているため、賠償の責任はない」と主張しました。韓国で損害賠償請求権の時効は、被害者が初めて損害を知った時から3年と定められているそうです。しかし韓国最高裁は、この主張を「権利濫用に当たる」と判断し認めませんでした。さらに判決は「原告は未払い賃金や補償金を求めているのではない」と述べ、「慰謝料請求権」を認めています。慰謝料なら、その後の精神的苦痛や差別、病気などを理由に請求できるので、賃金の支払いや補償金と違い、労働の実態などの事実関係が争点になりにくいという訴訟上の利点が指摘されています。
さらに判決文は原告が初めて損害を知った時点についての解釈を明記せず、損害賠償や慰謝料請求の時効がいつ成立するかは曖昧なままになっています。韓国の最高裁は、「時効についてはまだ判決で判断を下したことはない」「追加訴訟が提起されれば、これを引き受けた各裁判所が判断することになる」ということで、明らかに今後も裁判を起こす可能性を残しているわけです。
こういったことから時効の起算点について3つの考え方が出てくることになります。
時効の起算点には3つの考え方
- 2005年説。時効の起算点で最も古い可能性は、日韓協定の文書が公開された2005年とみるものです。協定の文書を見て損害を認識したという考え方で、今回の裁判の原告の1人であるイ・チュンシクさんはこの解釈を取りました。
- 2012年説。次に古いのは韓国最高裁が新日鉄住金の賠償責任を初めて認定した2012年とみるものです。
- 2018年10月30日説。2005年か2012年を起算点にしますと、いずれも3年を過ぎているため、まだ訴訟を起こしていない人が、新たに訴訟を提起できない、という都合の悪いことになってしまいます。そのため「起算点を最高裁が判決を言い渡した30日とみるべき」という、新しい解釈が出てきています。
新解釈で時効を延長しようとする背景には、どうも朴槿恵(パク・クネ)前政権の司法介入により最高裁の判決が5年先延ばしにされたとの疑惑が浮上していることもあるようです。
韓国のネットユーザーの声
被害を受けた人全員が謝罪と賠償を受けられるようにするべき
裁判を故意に遅らせたヤン・スンテ(前最高裁長官)の罪は重い。相応の罰を受けてほしい今回の判決とは関係なく、相変わらず日本に反省と謝罪を求める声もあります。
間違いを認めて謝罪し未来に進むこと。それがそんなに難しいことなの?このままだと日本は、朝鮮半島が平和、繁栄の道を進む中で少しずつ国際社会から孤立することになる一方で補償問題をいつまでも引きずることで日本との関係が悪化し、国際的イメージが低下することを憂慮する声もありました、
日本はすでに徴用被害者に補償した。韓国の安保や経済のためには日本との友好が欠かせないのに!なぜこんな非常識で無謀なことをするのか分からない。韓国政府は、日本と仲良くすることが国益につながることを理解してないの?
そんなこと言っていたら、数百年前に虐殺された人の遺族まで損害賠償訴訟を起こそうとするよ。条約も協定も守らない国を正常な国と言える?韓国の国家としての信用が低下するのを恐れる人たちもいます。
韓国を信じる国はいなくなってしまう。昔の条約も無視、政権が変われば内容も変わるなんて。冷静に考えよう
間違っていたとはいえすでに合意したものを蒸し返すのはよくない徴用工の問題は、今のところ日韓外交以前に、韓国国内で司法と行政のバランスが取れないことが解決を遅らしているようです。今回の判決で韓国の最高裁は、この問題に規範的解釈を示したというよりも、いうなればボールを政府のコートに再び投げ込んだだけのような印象を受けます。大統領府が沈黙を守っているのも気になります。韓国国民のためにも韓国政府は責任ある対応を示すべきではないでしょうか。
参考リンク
韓国で徴用工訴訟が増える?問題は「時効の起算点」=韓国ネットから懸念の声も
韓国「強制徴用工20万人の賠償請求の時効は2021年まで可能!国際的な恥だ」の声
徴用工問題、沈黙続ける韓国大統領府 「関与しない」