「徴用工問題」で海外の反応は?



先日韓国の最高裁で新日鉄住金に対して1人あたり1000万円の賠償を命じた判決が出たことから再び日韓関係の重要な争点になった「徴用工問題」。この問題に関する海外の反応をアメリカと韓国についてまとめてみました。





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    「徴用工問題」とは



    まず「徴用工問題」については、時事通信が以下のようにわかりやすくまとめています。

    第2次大戦中、日本統治下の朝鮮半島から日本本土に徴用され、過酷な環境に置かれた労働者をめぐる問題。日本と韓国は1965年、請求権と経済協力に関する協定を締結。日本が経済協力資金を支払うことで請求権問題が「完全かつ最終的に解決された」と確認した。韓国の元徴用工らが日本企業を相手取る訴訟を起こし、韓国最高裁が2012年5月に請求権を認める判断を下したことで請求権問題が再燃した


    米メディアの反応



    まずはABCニュース。Court orders Japan company to pay 4 Koreans for forced labor中立の立場からこのニュースを要領よくまとめています。興味深いのは、文大統領が2000年代初頭に徴用工の弁護をしていたことがある、と書いていることです。これは後にふれますが、2005年の官民合同委員会の委員であったときのことを意味しているのかもしれません。
    President Moon, who once represented South Korean forced laborers as a lawyer in the 2000s, 

     次はニューヨーク・タイムズ。How a World War II-Era Reparations Case Is Roiling Asia。この記事は判決内容、その意義、日本の反応、在韓日系企業の資産凍結の可能性、日本が国際司法裁判所に訴える可能性などについて解説しています。アメリカの立場からの見方としては、

    北朝鮮の核兵器問題やアジアにおける中国の勢力拡大に対抗して統一戦線を形成しようと模索しているアメリカ政府関係者にとっては、米日韓の緊密な協力を阻害する要因は、いかなるものであっても憂慮すべきものである。

    と書いています。


    韓国メディアの反応



    共同通信が10月31日付の韓国トップ紙の反応を簡単にまとめています。

    韓国最高裁が新日鉄住金に元徴用工4人への賠償を命じた判決について、31日付の韓国主要紙は1面トップで大きく取り上げた。社説では被害者救済に道を開く判断として評価する一方、問題が長期化することで経済や外交、安全保障の分野の日韓協力に悪影響が及ぶことを憂慮し、両政府に冷静な対処を呼び掛けた。 
    リベラル系の京郷新聞は社説で、2005年に日韓請求権協定に基づき日本が供与した資金で元徴用工の補償問題は解決したとの認識を示して以降、歴代政権がこの見解を維持してきたと説明。 
    保守系の中央日報は、「日韓関係は最悪の局面を避けるのが難しくなった」と強調した。

    どうやらリベラル系、保守系ともに日韓関係への悪影響を憂慮する考え方が多いようです。
     この傾向は朝鮮日報や中央日報にも見られます。
     朝鮮日報は社説で「韓日両国は強制徴用問題の荒波を乗り越えねばならない」と主張しています。この社説では、先に挙げたABCニュースとも関連しますが、文大統領と徴用工問題との関わりについて、次のように述べています。

    2005年に当時の盧武鉉(ノ・ムヒョン)政権は日本から提供された資金のうち、無償3億ドル(現在のレートで約340億円)は徴用被害者への補償が考慮されたものと判断した。強制徴用に対する損害賠償問題は事実上終わったという見方だった。その判断を下した官民合同委員会の委員には当時大統領府民政主席だった文在寅(ムン・ジェイン)大統領も加わっていた。ところが今回大法院はそれとは異なった判決を下したのだ。

    文大統領は、2005年に強制徴用に対する損害賠償問題は事実上終わったという見解に達した官民合同委員会に加わっていたわけです。同氏は今回の判決にまだ言及していませんが、こういったことも背景にあるのでしょうか。大法院の判決には学界からの批判もあり、朝鮮日報は「国際政治を考慮しない判決、同意しない」という大学教授の発言を紹介しています。この記事を読んでいると、今回の判決は、政治的要因を考慮しない司法部の動きとも捉えることができます
     中央日報も社説で「北東アジアで民主主義と市場の価値を共有する韓日両国がもう一度、未来のために知恵を絞る時だ」と主張しています。


    次の一手は慰安婦財団解散と抗日記念式典東京開催



     朝鮮日報はさらに韓国政府の次の手は「慰安婦財団解散と抗日記念式典東京開催」であると伝え、これらの措置が日韓関係に悪影響を与えることに憂慮の念を示しています。
     このように歴史問題を無意味に外交に利用し、日韓関係を冷え込ませることで、韓国の外交関係者は何を達成しようとしているのか、この問いへの解答がなければ、日本の側もあまり友好的な対応はできないのではないでしょうか。